2010年代のポピュラーミュージック・シーンを雑に振り返ってみたメモ。
まず、データとして以下を参照。
主要な音楽メディアの「2010年代のディケイド・ベスト・アルバム」を集計
米フォーブス「この10年で最も稼いだミュージシャン」TOP10
あと、もっとインディよりの趣向だとpitchforkの読者による2010年代のベストもある。
稼いでるということでは、レジェンドたちや、ポップ・スターたちが相変わらず強いが、時代を象徴する、評価されている、ということになるとヒップホップ勢が完全にシーンを塗り替えた、というのが2010年代、と言えるのだろう。
それとは別に、この年代に現れた特徴のひとつは「声の機械化」あるいは「声をあえてデジタル加工する」ということがあると思う。2001年のダフト・パンク「One more time」の大ヒットからはじまり、日本では2007年にPerfume「ポリリズム」のヒット、同年にはsupercellをはじめとしたボカロPが登場、そして2010年にはハチ(米津玄師)、wowaka、DECO*27等が登場する。その後の彼等の活躍は言うまでもない。特に米津玄師は「国民的」アーティストとして2010年代末を駆け抜けた。また、デビュー当初からボーカルにオートチューン処理するアプローチを見せていたSEKAI NO OWARIがインディーズ・デビューするのも、この年だ。
ハチ「マトリョシカ」
2011年にはジェイムス・ブレイクがデビュー、同じ年ボン・イヴェールの2ndアルバムがビルボード2位のヒットとなる。2014年にはダフトパンクがグラミー賞5部門を制覇する。
ボン・イヴェール「wood」
もうひとつは「4つ打ちのリズムの復権」も特徴のひとつだと思う。
世界的なEDMの流行(現在では単なる4つ打ちではないものも多いが)はその典型だが、この音楽には、クリエイターたちが意識する・しないに関わらず、ハウス、そしてさらに遡るとディスコ・ミュージックがルーツにあり、そうした音楽がもともと地下や森の中に潜伏して(潜伏せざるを得ず)発展していった、ゲイ・カルチャーを含むマイノリティ・カルチャーから生まれたもので、それが何度目かの大きな開花を果たした年代とも言えるのではないだろうか。また、活躍しているアーティストたちが、デヴィッド・ゲッタがフランス、アヴィーチーがスウェーデン、ZEDDがドイツ、などのように国際的なのも特徴だ。日本でも2010年代はロックバンドが四つ打ちのリズムに接近し、フェスでは「四つ打ちダンスロック」が席巻した。
【参照】
フェスシーンの一大潮流「四つ打ちダンスロック」はどこから来てどこへ行くのか
2010年代初頭はニューヨークのブルックリンから、MGMT、LCD Sound system、Vampire weekend、animal collective等多数のミュージシャンが登場し、かつてのマンチェスターやシアトルのようなムーブメントとなるかと思いきや、そこまでのうねりにはならずに終わった。(たぶんまだ続くがとりあえず今日はここまで)