僕がこうしてメンタルヘルス関連の発信を、主に音楽業界に向けて始めたのは2013年頃になります。その頃から、ありがたいことに関心を持って応援してくださる方がいました。一方で、なんらか提案しても「良い話だね」で終わって、結局何も起こらない、ということも繰り返してきました。(まあ、愚痴です 笑)。大体、自分のように目立つ実績も立場も力もない人間の提案など、現実の世の中ではなかなか説得力を持たないだろうことはわかっていましたし、僕自身もいわゆるヴァイタリティ溢れる、積極的かつ社交的な性格などとは正反対なタイプですので、ぐいぐいやってこれたわけでもありません。自分ができる範囲でゆるく、しかし内容はしっかりと発信を続けていこう、とやってきた感じです。

すると、少しずつですが、賛同してくれる方が増えてきました。2016年には本田秀夫先生との共著で『なぜアーティストは生きづらいのか?〜個性的すぎる才能の活かし方』という本を出すことができました。いろんなトークイベントなどにもお声掛けいただく機会も増えてきました。

そして、2019年の今日、9月20日に『なぜアーティストは壊れやすいのか?〜音楽業界から学ぶカウンセリング入門』という単著を出すことができました。その後、COVID-19の問題が発生したこともきっかけにして、メンタルヘルスに関する意識がこれまでよりも高まってきたように感じます。音楽・エンターテイメント産業においても、様々なところから声が上がる様になってきました。この流れ自体は、とても良いことだと思っています。

メンタルヘルスに限ったことではありませんが、何かのテーマや概念が注目されはじめると、大手の資本や権力をもった側の人たちが動きはじめることが多々あります。そのこと自体は、社会に良い影響を与えることができると思いますし、喜ばしいことだと思います。ただ、この時に同時に気をつけておきたいと思うのは、概念が多数派や強者側に都合が良いものに変質してしまわないこと、そして結局恵まれた環境にいられるところだけ状況が改善されて、それ以外のところはいつまでも後回しになってしまうこと、です。また、多くのことでいわゆるトリクルダウンは期待できないとも思っています。

そこで僕は、よりアンダーグラウンドな、インディペンデントな、マイノリティな、とにかくそうした場所での発信をできれば増やしていきたいと考えています。僕はメジャーなフィールドを全く否定しませんし、これからも機会があるのであればできるだけそうした場での発信や協力を続けていくつもりではありますが、それはそれとして、しっかりと地面を耕して水を与えたいと思うのです。

世界を良い意味でひっくり返す種は、高層ビルの上にはありません、それは大地や地下にあると思います。

まあ、単に僕がアンダーグラウンドな方が好きなだけなんでしょうが(笑)。そんなわけで、何かアイデアがございましたら、お声掛けいただけますと幸いです。今後ともよろしくお願いいたします。