以前『アーティストのためのカウンセリング入門』という連載で、「同調圧力」について「ソロモン・アッシュの実験」をとりあげているのだが、それは次のような内容である

ソロモン・アッシュの実験=「同調」

被験者1名と複数のサクラで集団をつくります。そして1本の棒の画像を見てもらい、それと並んで提示された画像に描かれた3つの棒の中から、その1本と同じ長さの物を選んでもらいます。その長さの違いは誰が見ても明らかにわかるようになっているのですが、サクラ全員に間違った回答をさせると、12回やって1回もサクラの誤答に同調しなかった被験者はたったの25%でした。正解が明確に分かる問題であっても、周囲の回答次第では自身の回答を変化させてしまうこと、人は強制されなくても「同調」してしまうことが明らかになりました。

なんと、答えが間違っているとわかるはずなのに、75%もの人たちが「同調」してしまったのだ。

また、どのような人が同調しやすいのか、ということに関する研究もいくつかあるが、有力な説のひとつに、同調しやすい人の特徴として低い自尊心をあげているものがある。(*)

そうなってくると、日本社会の若者たちは同調しやすい特徴をもっているかもしれない。諸外国と比べて13歳~29歳の日本人の自己肯定感・自尊感情は圧倒的に低いということは、同じ連載の別の回で書いたので、こちらを参照して欲しい。

選挙前ということもあり、今、若い世代の現状追認傾向が指摘されることが増えた。しかし、そもそも自己肯定感(自分自身をそのまま受け容れること)を持てないような環境をもっと上の世代から延々と作り続けてきたのだ。ただでさえ人間の意思決定は、ソロモン・アッシュの実験でわかる通り、非常に脆弱だ。そこへさらに同調しやすくなってしまう環境を与え続けているのだ。

だから、根本的には、自己肯定感を否定するような思想を改めること、そして、すぐに環境を劇的に変えることが困難だとしても、せめて若い人には「君たちが生きてきた小中高専門大学という環境の方がいろんな意味で異常なのだ」ということを、きちんと伝えることが大事なんだと僕は思っている。同じ年齢の人間が、同じところに詰め込まれ、苦手克服ばかりが美徳とされ、せいぜい学校の成績や部活での活躍か、学校のシステム維持にどれだけ貢献したかくらいしか人を評価する基準がない世界なんて、ほんとは長い人生の中で学校くらいのもののはずなのに、一度染み付いたことに気がつかないと、ほんとは世界はそのような在り方をしていないのに、異常な状態を同調して受け容れて、異常なまま生き続けることになる。それは、絶対に苦しいはずだ。

(*)参照

「多数派への同調に対する自己意識と自尊心の影響」(千葉大学 黒 沢 香)