2025年2月13日に行った「表現者のためのメンタルヘルス講座」では「陰謀論」をテーマに取り上げました。そこで紹介した『サブカルチャーの心理学2』(山岡重行編 サブカルチャー心理学研究会著 福村出版)から、いくつかメモ的に引用しておきます。
陰謀論(conspiracy theory)とは、重要な出来事は驚異的に邪悪で強力な集団によって秘密裏に実行された結果だとみなす未確認で比較的に信じがたい言説である(Brotherton & French,2014)。
社会現象として機能するようになったのは、Albarracin et al.(2022)によれば、全体主義時代の社会を統制するために創出し、それに病的な虚言の意味を込めるようになってからだという。つまり、陰謀論を創造してその巨大な勢力を持つ恐怖の集団を敵視するように仕向けることで、自集団の凝集性を高めたと解釈する。
荒唐無稽な虚偽情報でもよくできた物語になれば、真実だが退屈な情報に勝る。よくできた物語は理性ではなく感情に作用する。強い物語は強い感情を生み、強い感情は物語の影響力を強化する(Gottschall,2011)。文化や性別、年齢にかかわらず我々は感情を動かしたいという衝動を持っており、物語によって人々が抱く感情やかき乱される感情が大きいほど、その物語は社会の広い範囲で共有され、また長期間にわたり繰り返し共有される(Nabi & Green,2015)のである。
陰謀論を信じる背景には、これまでの心理学研究から不安が関わっていると言える。個人は社会生活に行き詰まって剥奪感が高まると、将来に対する閉塞感を抱くことになり、不安を抱えるようになると考えられる。社会不安が高まると自由な意思決定を放棄し、陰謀論的な強者といえるヒトラーからのホロコーストのような過激な命令にも服従した権威主義的服従の傾向を示した古典的研究があるし(Fromm,1941;Adorno 1950)、犯罪に関与したオウム真理教の信者たちも自分の人生意義に不安を生じていたときに、陰謀論に感化されていた教祖の権威に服することでマインドコントロールされたとも分析できる(Nishida,2019)。
社会生活の行き詰まりなどから、個人が方向づけていた人生意義の追求が不安定になり、不安を抱くと、そのような否定的な状態に陥っている自分の現状を説明したいという心理が高まると考えられる。
本来の自分はこのような否定的事態を享受しなければならない者ではなく、もっと社会的に認められるべきなのに理不尽だと思うような自己愛の強いパーソナリティは、その原因を外的な事情に帰属することになりやすい。そのように人々が原因帰属の情報探索をした結果、悪の闇組織が社会をおかしくさせているから、このように否定的な自分の人生になっているという他社責任論は、ユーティリティの機能性に合致するので、陰謀論を受容すると予測できる。
陰謀論者の6つの論理
1 証明可能性の強調:「まだ証明されていない」と言い張る
2 権威の否定:表向きの説明を嫌う
3 陰謀家のパワーの過大評価:陰謀家は常に社会を完全否定しているとみなしている
4 悪の化身と戦う正義の味方:善と悪の二元論
5 偏った証拠の評価:平等に証拠に向き合わない
6 反証不可能な論理:科学的証明の原理を逆手にとる
科学的証明法では、存在しないことを証明することはできない。そのため「闇組織の世界支配」はどんなことがあっても否定されない。